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ルーブル美術館展 地中海 四千年のものがたり [アート&デザイン]

8月の初め、友人と一緒に上野の東京都美術館に行きました。
見たのは「ルーブル美術館展 地中海 四千年のものがたり」

20130803 ルーヴル美術館展.JPG

写真は展覧会の目玉、ルーヴルの「女神」、アルテミス。
信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神、通称「ギャビーのディアナ」
制作されたのは100年頃。18世紀、スコットランドの画家ハミルトンが、ローマ近郊ギャビーで発掘した彫刻です。

アルテミスという名前を聞いて思い出したのが、イギリスに赴任していたころ、勤務していた会社の営業収支を計算するツール名がARTEMISだったこと。「狩りの女神」に譬(たと)えて、受注を勝ち取ろうという意味が込められていたのかもしれません。

いつも痛感するのは、西洋の美術や文学を深く理解するためには、世界史、キリスト教などの宗教、ギリシャ神話などへの造詣が必要だということ。
私の浅い知識では同じものを見ていても、きっと表面的な理解にとどまっているに違いありません。
(生きている間の課題でもあり、老後の楽しみでもある学習目標)

広い広いパリのルーブル美術館では、「古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術」「古代エジプト美術」「古代オリエント美術」「イスラム美術」「絵画」「彫刻」「美術工芸品」「素描・版画」の8美術部門に分類されて展示されている美術品を、「地中海」という一つのテーマのもとに企画されたのは初とのこと。
古代よりエジプト文明やエーゲ文明、のちに西洋の古典の礎となるギリシア・ローマ文明が誕生した地中海。また、西洋と東洋の文化がダイナミックに交差する場でもあった地中海をテーマに、古代~19世紀まで、四千年におよび「時間と地域を超える旅」への誘(いざな)い。

会場構成は次のとおり。

序 地中海世界 -自然と文化の枠組み-

第Ⅰ章 地中海の始まり -前2000年紀から前1000年紀までの交流-
 素材や技術、神話や言語が広がった。
・「赤像式クラテル(壺):牡牛に変身した主神ゼウスによる王女エウロペの掠奪」(イタリア、紀元前360年頃)に描かれている人物が、池田理代子さんの描く漫画の登場人物に似てる。
・受け皿を持つ「泳ぐ乙女の形の奉納用スプーン」(エジプト、前700-前650年頃)、可愛かったなぁ。

第Ⅱ章 統合された地中海 -ギリシア、カルタゴ、ローマ-
 多様な文化をもった地中海が唯一統一された時代。

第Ⅲ章 中世の地中海 -十字軍からレコンキスタへ(1090-1492年)-
 宗教の交差、活発化する東西交流。
・イスラム文化の技法で「恋する男女が描かれた杯:剣を振りかざす騎士とその恋人」(キプロス、1300-1400年頃)の焼き物、現代でも通用するデザイン。

「レコンキスタ(Reconquista)」 
イスラム教徒に占領されたイベリア半島をキリスト教徒の手に奪回する運動。711年のイスラム侵入後から、1492年のグラナダ開城まで続いた。この過程でポルトガル、スペイン両国家が成立した。国土回復戦争。
英語にすると、re(再び)conquer(獲得する)。今なら、言葉の意味から歴史を理解できるような気がする。世界史を学んでいた高校生時代に、こんなふうに説明してもらえたら、もう少し楽しく歴史を勉強できたかも。。

第Ⅳ章 地中海の近代 -ルネサンスから啓蒙主義の時代へ(1490-1750年)-
 西洋における東洋ブームと、東洋における西洋ブーム。

第Ⅴ章 地中海紀行(1750-1850年)
「Grand Tour(グランドツアー)」
昔のイギリス貴族・上流階級の子弟が、教育の仕上げとして行ったヨーロッパ大陸巡遊旅行。
イギリスにはgap yearと言って、大学進学前の一年間、ボランティア活動などの人生経験を積ませることで正規の教育だけでは得られないものを補う期間がありますが、同様の発想なのでしょうね。
なんかいいな、こういう精神的な余裕。(もちろん金銭的な余裕がないと実現しませんが) 

今回も美術とは関係なく、いろいろと考えさせられました。


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コメント 6

YAP

ルーブル美術館は二度、入口付近まで行ったことがありますが、中に入ったことがありません。
一度目はあまりの長蛇の列で断念、二度目はバンクホリデイで休館でした。
日本で所蔵物が見られるのは、貴重なチャンスですね。
by YAP (2013-08-25 15:54) 

Ms.てびち

全く同感です。なのでうちもおぼっちゃまはカトリックでもなんでもないけどあの学校に入れてたんだよね。アメリカ人社会の中にいると宗教がないってのは結構居心地悪いときがあるし(特にうちとか軍人さんとか)。本人はカトリックって言ってるけど田舎では南無妙法蓮華経(笑)。
ルーブルか~(遠い目)。あそこは月に一度は無料の日があったし赤ちゃん連れだと並ばないですむからよくお散歩に行ってたよ・・・なんか夢みたいや@昨日からDC。
by Ms.てびち (2013-08-26 23:13) 

いっこ

★YAPさん、私は25年前に一度行ったきり。記憶も薄れています。
ルーブル美術館や大英博物館など大きなミュージアムの所蔵品が時々来日しますが、ごく一部なので、やはり現場でじっくりと見たいです。
by いっこ (2013-08-27 00:06) 

いっこ

★Ms.てびちさん、今思いついた。
御曹司、生まれてから父親の転勤に伴い世界各地に暮らし、今もアメリカ国内を連れまわされているけど、形を変えたグランドツアーみたいな感じ?いろんな場所で、いろんな人と会い、いろんな光景を見て、知らず知らずのうちに成長過程で(良い悪いは別にして)影響を受けているんじゃない?

ようやくDCということは、いよいよ新居に入居?お疲れさま~
by いっこ (2013-08-27 00:17) 

ラパン

本当にそう思います。欧米の映画を観ていても、同じ事を感じます。
あらためてギリシャ神話の本など読むと、また面白いこと。
そしてそんな遥か昔から人間が学びや戒めとしてきた事って変わっていないんだなあ、と感動します。
ルーヴルは、素晴らしいのだけど迷宮過ぎて苦手、、、人が居過ぎて苦手、、、なんですよ〜。
こんな風にひとつのテーマで集められたものを一同に観る事が出来るのは、だから素晴らしい!と私は思いますね〜。
by ラパン (2013-08-27 05:03) 

いっこ

★ラパンさん、さらに、地名や物の名前などが映画などで出てくると、行ったことのある土地、見たことのある物、食べたことのあるものなどは具体的にイメージできますよね。
だから旅は楽しい♪
by いっこ (2013-08-27 22:02) 

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